2025-09-01から1ヶ月間の記事一覧

140字の俳句(日日の事)

柿の実が色づき始めた。熟すのが早い木にはもう、 ムクドリが集まって.賑やかに鳴き交していた。 実の半分をそぎ落としたように食べられた柿の実が 一つ、一際目立っていた。 柿半分 鳥に食われて 豊かなる 追記 柿は本来、人に食べられるために実を 付けて…

140字の俳句(日日の事)

黎明に昇り始めた朝日を受けて、最初に光を放つのは 芦の葉先に宿る朝露。 今日もいい日に違いない。 日本の夜明けはここから始まる。 黎明の キラリ一閃 芦の露 追記 秋の季語「露」を詠んで良く知られた句に川端茅舎の 「金剛の露ひとつぶや石の上」があり…

140字の俳句(日日の事)

散歩していて気が向くと、時々だが葉鉄砲をする。 選んだ葉にもよるが、ポンと乾いた大きな音が 澄んだ秋空に響いたときは、気持ちが良い 葉鉄砲 ポンと鳴らして 秋に入る 追記 色々な葉を試しているが、例えば椿の硬い葉や 柔らかめの葛の葉など、どちらで…

140字の俳句(日日の事)

エノコログサを見る人は何故か懐かしい感情を覚える。 ネコジャラシの名で知られるが、秋も深まり、冬になっても 散り落ちる事は無く、その場その場で様々な世界を演出してくれる。 遠山の 微かな木霊 エノコログサ 追記 エノコログサは何千年もの歴史を持ち…

140字の俳句(日日の事)

オミナエシは最近数を減らしていると云うが、野辺の 草むらに咲く姿は、日本的な風情にあふれ、品のよい 美しさを感じさせる。 ここ迄と 誘うが如く 女郎花 追記 小林一茶が思わず笑い出したくなるような句を 詠んでいる。 「よろよろは我も負けぬぞ女郎花」…

140字の俳句(日日の事)

済んだ朝の空気に、秋の到来を実感した。 雲一つない抜けるような青空のもと、一塊の曼殊沙華が 鮮やかだ。 ウオーキングの人達の足取りも心なしか軽い。 透通る あおに緋を置く 曼殊沙華 追記 次は豊年を寿ぐような句。松宮育子さんの作品です。 「黄金田を…

140字の俳句(日日の事)

キキョウは自ら主張する事は無いが、紫色の姿に漂う気品は 隠しようが無い。そして地に落ちた花はたちどころに色を失い、 後に一切の未練を残さない。 紫を 土に返して 桔梗終ふ 追記 キキョウの蕾の特徴を巧みに捉えた句を見付けた。 「桔梗の蕾をぽんと鳴…

140字の俳句(日日の事)

黒い毛並みとフサフサした白い胸毛が特徴の牧羊犬、 ボーダー・コリーの散歩に出会った。時々見掛ける 犬種で、とにかく運動量が多い。信号を待っている 時でさえ、片時もじっとしていない。 牧羊犬 銀杏並木に もの足らず 追記 羊の群れを追って一日中野山…

140字の俳句(日日の事)

大型蝶のクロアゲハが、突如小さな庭に現れ、 止まること無く何処かへ飛び去って行った。 一瞬だが見る人を空白の世界に引きずりこんで・・・・。 虚より来て 空へ飛び去る 黒揚羽 追記 黒揚羽の雄は日が高くなると、上空に蝶道 と呼ばれる、独自のルートを…

140字の俳句(日日の事)

韮の花は地味だが清楚でスッキリした印象を受ける。 葉の間から花茎を3~40cm伸ばし、その先に 白い花を咲かせる。集団で咲く花々の高さが妙に 揃っている点に感じる処があった。 やつがれの ここが天辺 韮の花 追記 韮は中華料理には欠かせない。栄養…

140字の俳句(日日の事)

遠くから観覧車を眺めると、その動きは実にゆっくりしている。 籠の中の男女は、沈む夕日を見ながらどんな話を。 他人が聞いたら取るに足らない内容でも、本人達は至福の時。 秋入日 腹に収める 観覧車 追記 秋の入日は見る人の顔を赤く染めると云う。 一時…

140字の俳句 (日日の事)

鉄道と高速道路それに一般道も加わる高架道は、その下を 横断するだけで100m近い距離になる。 昼間も薄暗い高架下でも、しきりに秋の虫が鳴きだした。 騒音の切れ目切れ目に秋の虫 追記 健気なものだた思う。都会の片隅の、しかも車両騒音の 殊に激しい高…

140字の俳句(日日の事)

海岸の砂浜に群生するハマヒルガオ、海風に吹かれて細かく 揺れる様子は可愛い。 当地では河口近くの土手に今も 盛んに花を咲かせている。薄いピンクの色と、形のせいか やや寂しい花との印象を受ける。 浜昼顔 黙って話しかけてくる 追記 朝顔の花を小型に…

140字の俳句(日日の事)

ススキの穂が出始めた。若い内は花穂がキチンと 揃っていて気持ち良い。 因みに沖縄では、冬になっても枯れずに常緑化し、 背丈は5mにも達すると云う。知りませんでした。 涼やかに 花穂を揃へ 初尾花 追記 ススキを詠んだ句の鑑賞で必ずと云って良いほど 取…

140字の俳句(日日の事)

近くの公園の小さな水田に植えられた、古代米の稲穂が ほぼ出揃った。今年は実の入りも良いようだ。 子供達の作った案山子に取り囲まれ、これでは雀も 怖くて近寄れそうにない。 小さき田を 案山子が囲み 古代米 追記 古代米とは昔から作られ続けているもの…

140字の俳句(日日の事)

大分前の話になるが、小学校の花壇に芥子の花が植えられていた。 夏も終わりの頃になると、沢山の芥子坊主が出来ていた。 芥子坊主に傷を付けると白い液が流れ出した。今思えばあれが アヘンのもとになるのだろうか。 己には 己が見えぬ 芥子坊主 追記 江戸…

140字の俳句(日日の事)

雀よりも一回り以上小さいセッカ。 素早い動きと、体に 似合わぬ通る声の持主。チッ、チッ、チッと飛びながら 鳴く様子は可愛くて愛くるしい。 芦の生える川辺を歩く時の楽しみの一つになっている。 頼りなき 草の穂つかみ セッカ鳴く 追記 セッカは雪加、雪…

140字の俳句

アレチノギクは道端や荒れた土地に見られる、地味な 雑草だが、生命力は中々のもの。 背丈は50㎝位まで伸び、誰でも目にしたことはある筈。 しかし名前は意外に知られていない。 アスファルト割れ目に荒地野菊立つ 追記 ホトトギスの俳人原石鼎が「筑紫野路…

140字の俳句(日日の事)

冬場はバッサリと刈込まれていた萩が、枝葉を繁らせ、 花をつけ始めた。 散り敷かれている花の様子は風情 たっぷりだが、無数の小さな丸い葉が創り出す影も 色々な表情を見せてくれる。 やはらかに 重なる葉陰 里の萩 追記 加賀千代女の句「こぼしてはその葉…

140字の俳句(日日の事)

道路の直ぐ脇にポツンと立つ、石のお地蔵さん。恐らく 交通事故のご遺族が立てられたと思うが、年季が入っている。 御近所の方の献花だろうか・・・・ススキも穂を伸ばし始めた。 石地蔵 ペットボトルに 花ススキ 追記 お地蔵さんは地獄に落ちた人々の苦難を…

140字の俳句(日日の事)

まだ残暑は厳しいが、見上げれば秋の雲。 上空は既に秋、一年中で一番美しい雲の現れる季節。 空に向かって心を遊ばせる季節が来た。 秋の空 何も言う事 ありません 追記 面白い視点からの句が有った。作者は石川文子さん。 多分、福島県在住の獣医師さんで…

140字の俳句(日日の事)

犬を連れての散歩を見ていると、最近は小型犬と一緒の ケースが圧倒的に多い。 彼等は元気だ、特に芝生の広場に 来ると大はしゃぎ、小さな体で飼い主を引っ張りまわす。 芝の露 鼻を鳴らして 小型犬 追記 小さな体の短い脚で、露の降りた芝生の上を走り回る…

140字の俳句(日日の事)

多くの人が貧しく、多くの人が食べ物に不足していた時代。 お世話になったのは、サツマイモでした。 覚えていますか?青木昆陽の名前。 偉大なお仕事をされました。 斯くあるや辛酸の味さつま藷 追記 かつては命を支える為に、我慢してでも食べたサツマイモ…

140字の俳句(日日の事)

夕方になると一斉に鳴きだすカナカナ。林全体を 揺るがさんばかりの大音響。 鳴き止むときも、これまた一斉! 一挙に静けさが戻ります。 カナカナの鳴き止みて増す夜の闇 追記 小説家、劇作家として知られる久保田万太郎は巧みな 俳人でもありました。カナカ…

140字の俳句(日日の事)

聞き覚えのあるホオジロの囀り。広々とした河原の空間一杯に 広がってゆく。聞きなしはご存知「一筆啓上仕候」。 身近な野鳥だが、鳴き声は魅力的だ。 頬白の声広々と涸河原 追記 大きさは雀クラス、分類上もスズメ目に入る。 「源平つつじ白つつじ」という…

140字の俳句(日日の事)

今日は雨、それもしっかり降っている。 庭先の物干し竿には透き通った雨の滴が一列に。 それぞれが初秋の景色を包み、宝石のように輝いている。 秋の雨竿に一列明き玉 追記 正岡子規にユーモラスな句がありました。盟友の漱石が イギリス留学の挨拶に来た際…

140字の俳句(日日の事)

コオロギの体は太く短く、頭部は丸く光沢がある。お馴染みの 秋の虫がもう鳴き始めた。こんなに気温が高いと云うのに。 自然の摂理は人の感覚の外で働いているのでしょう。 ちちろ虫肩で分け入る縄のれん 追記 薄暗くなり始めたころ、飲み屋の暖簾をくぐる一…

140字の俳句(日日の事)

何か大きな変化が起こりそうな動きの中で九月に入った。 世界政治の混迷、AIの飛躍的な発達、我が国の不安定な政治、 等々社会的ボラティリティは上がる一方だが・・・・ 恐らくは日本に有利秋高し 追記 平和な80年間だったと云うが、果たして個々人に とっ…

140字の俳句(日日の事)

霧の濃い朝、見上げるとそこには大きな卵の黄身。 普段は直接この目で見ることの出来ない太陽も、 赤子のように丸裸にされている。 朝霧の大きな黄身を連れている 追記 及川貞(てい)、明治生まれの女流俳人。戦争でしょうか 三人の子を失ったと言う。多く…

140字の俳句(日日の事)

葛の葉の勢は凄い。ひと夏で野山を覆い尽くさんばかり。 しかし吹き渡る風には従順である。 白っぽい葉裏を返して風に応えている。 葛の葉の風に教える風の道 追記 野草を食べる愛好家の間で、葛の芽は人気がある。 先の方の柔らかい部分を10cm位折り取って…