2024-01-01から1年間の記事一覧

140字の俳句(日日の事)

人差し指と親指で距離を測る仕草に似た動きを見せる尺取虫。 ギリシャ文字 Ω の形を描きながら前進して、枝の先まで 到達すると、更にその先の空に向かっておいでおいでをする 姿はユーモラスだ。 また、動きを止めて枝に化ける擬態で敵の目を晦ます知恵も …

140字の俳句(日日の事)

中学二年の男子は日本人の中で最もシャイな人種。 中学校の教師から直接聞いた話だ。 言われてみれば自分でも何となくそんな記憶が 有るような無いような。 兎も角複雑で難しい年頃。先生方も苦労が多いのだろう。 次の時代を背負う彼等にエールを送らずには…

140字の俳句(日日の事)

静かな並木道を歩いていたら、突然羽音がして 後頭部を何かが掠めた。振り返ると素早く高い 木の枝に逃げるオナガの姿が見えた。 殊に繁殖期のオナガは気が荒い。姿は中々に美しいが 鳴き声はひどく耳障りである。 カラスの仲間だけに頭がよく、人を恐れない…

140字の俳句(日日の事)

黒くなった幾つもの山桃の実がベンチの上に転がっていた。 鮮やかな赤色を経て暗赤色になると、実を落とし始める。 昼夜を問わず盛大に落とし続ける山桃の実は、やがて車座 となって樹の根本を囲むようになる。 鮮やかな赤色が食べ頃で、今年はその時機を逸…

140字の俳句(日日の事)

ほの乱る植田の筋に泥煙 整然と植えられた稲の苗も列に多少の乱れは残る。 苗は田の泥に根付き、風に涼しく揺れている。 人声が去り暫くすると所々に小さな泥煙が立つようになる。 水田の生き物は多種多様、人の手が加えられた自然の力も 手付かずの自然に劣…

140字の俳句(日日の事)

玉ウキのどんみり沈む手長釣 梅雨が近づくと手長エビ釣りのシーズンに入る。 川辺からのんびり竿を出す老人。ゆっくり沈む玉ウキの 動きを楽しみながら静かに竿を上げる。 一対の長い鋏脚を持つ手長エビと老人の笑顔が重なる。 河口に近い汽水域のテトラ等の…

140字の俳句(日日の事)

ドロリ垂れ心底嘗める棕櫚の花 菜園で使う笹竹を採っていて、ふと上を見ると分厚い舌を ダラリ垂らした様な褐色の物体。 周囲に樹木が多く昼でも薄暗い所なので、その不気味さに 余計びっくりした。 よく見ると棕櫚の木だった。 それにしても人を驚かせる花…

140字の俳句(日日の事)

ざくろの花突っけんどんに落とされる 柘榴の花が敷石の上に落ち、一弾みする瞬間を見た。 丸く膨らんだ花托部分を含め花全体の形を保ったままに。 散ると云うよりも落とされる感じで、余分な花は選別されてゆく。 柘榴は平安時代に渡来。銅鏡の曇り止めに柘…

140字の俳句(日日の事)

よしず掛老婆終日貝を剥く 敗戦で誰もが貧しかった時代。 よしずで囲われた小屋の中で老女が独り、 朝から貝を剥いていた。 当時住んでいた海辺の小さな町の光景である。 小屋の周囲は貝殻の山、貝殻の放つ強い臭いの中で 子供たちは元気に遊んでいる。 追記…

上半期最後のサプライズ

今週のお題「上半期ふりかえり」 鳩が二羽。 前後して仲良く石段を下ってゆく、それも一段ずつチョンチョンとだ。 石段は全部で31段。改めて確認したから間違いない。 二羽で飛んできて、上から最後まで一段ずつ降りて行くなんて! 周囲に居るのは僕一人だっ…

140字の俳句(日日の事)

初夏はキス釣り。 明確なアタリは素人にも分り易い。誰にでも釣れるが 数を出すには矢張り経験と工夫が要る。 世渡りと変わらぬ点が癪の種。 休日の釣り船は何処も満杯、期待に膨らむ胸を船べりに並べ 船足も快調。 船頭は笑いが止まらない。これを書き入れ…

140字の俳句(日日の事)

海紅豆が派手に花を散らしている。 散らしても間もなく沢山の花を咲かせる丈夫な樹。 濃い緑の葉陰から覗く蝶に似た真っ赤な花は、 地に落ちても暫くは色褪せず、形も崩れない。 江戸川河口に近いテーマパークの周囲には海紅豆の 並木も見られる。 見限られ…

140字の俳句(日日の事)

明け方の住宅街。行く手の方向にボーっと浮かび上がるもの。 近づくとヤマボウシの花、真っ白な花弁?が群がるように 咲いている。まるで滝が流れ落ちるような清潔感だ。 秋になれば沢山の赤い実をつける。赤い実は生で食べられる そうだが、実際に口にした…

140字の俳句(日日の事)

初夏の川面を眺めながら、何故か若い人へ贈る言葉を 考えていた。 先程からボラがしきりに跳ねている。 気持ちよく喜んでいる様子だ。 爽やかな快晴、川の水も何時になく澄んでいる。 何れ大きな決断を迫られる君達にとって、 今日はきっと良い日に違いない…

140字の俳句(日日の事)

松林の向こうは邸宅の立ち並ぶ住宅街。 その内の一軒だけがド派手な黄色に塗られている。 近くに行って合点がいった。全ての窓に嵌められた 金属製の防犯金具は中国風のデザイン。 風水だ‼ 松林は今、古い葉と新しい葉の交代期。 しきりに松葉を散らしている…

140字の俳句(日日の事)

半日陰の井戸端に雪ノ下。 鴨足草と書いてユキノシタ、虎耳草と書いてもユキノシタ と読ませる。何れも形が似ていることからきている様だ。 昔は子供が中耳炎に罹ると、生の葉の絞り汁を飲ませて 治したという。 雪の下を観察した際、葉の裏が赤いのに驚いた…

140字の俳句(日日の事)

二羽の軽鴨が近くの公園に棲みついた様だ。 枝垂梅の花が散り青葉に変わるその下に、チョコンと 二羽はうずくまっていた。近づいても動ずる気配はない。 人間を信頼しているのか?それとも嘗め切っている? 翌日の朝も同じ場所に二羽はいた。 野良猫やカラス…

140字の俳句(日日の事)

炊き上がった釜の中を覗き込むと、押麦の黒い筋が 複雑に入り乱れて全面を覆っていた。 母が杓子で下に隠れている米と掻き混ぜて茶碗に盛る。 殆どの国民が貧しかった時代の懐かしい光景である。 今では麦の黒い筋は取り除かれ、増量の為に混ぜる イメージも…

140字の俳句(日日の事)

ギシギシの花穂は褐色に代わり、種子も熟した。 ほんのひと月前は若々しい緑色の花穂だったのに、 早くも一仕事終えている。 そう言えば早婚の女性の子は総じて早く結婚するようだ。 五十代で孫を持つ知人の女性は、今も第一線でバリバリ 働いている。別に早…

140字の俳句(日日の事)

勝手口前の狭い庭に葡萄棚。 家人とみられる老女がしきりに手入れをしている。 葡萄の房の一粒一粒は未だ直径一㎝に満たず、青くて 固いが房の形はもう一人前である。あと二~三ヶ月も すれば立派な房となり家族の食卓を飾るに違いない。 老女はそれを楽しみ…

140字の俳句(日日の事)

川辺に一羽のカワウ。 何するでなく小岩に止まっている。 10メートル位に近づいたが逃げようとしない。 良く見ると片脚がない。釣糸が絡まり片方の脚が壊死して しまったのか。 釣り人の与える魚を待っているのだろう。 何としてでも生きようとする生命力に…

140字の俳句(日日の事)

アガパンサスの勢いが増している。 次々に茎を立ち上げ、すでに先端の蕾は一部がほころび 始めている。 花言葉は「優しい気持ち」とあるが、勢いよく伸ばす 花茎は林立し、内輪でも激しい生存競争を演じている。 和名は紫君子蘭、言われてみればその様にも見…

140字の俳句(日日の事)

六月の渓はむせ返るような緑に包まれてる。 渓水は雪代の濁りも取れ、争って先を急ぐ。 満ちる潤いの中で苔たちは平素の慎みを忘れ、 木々の若葉は心地よい時を楽しんでいる。 かくも穏やかに充足した世を去り難く、 おわします御仏は過ぎし日の事を静かに思…

雨傘とワイパー

今週のお題「防水グッズ」 日課としている朝のウオーキングで新品同様のビニール傘を 見付けた。 前夜遅く雨が上がったので持ち歩くのが面倒に なったのかも知れない。 防水グッズの本命は矢張り傘。 でも考えてみれば、雨除け を手に持って歩いているだけの…

140字の俳句(日日の事)

紫陽花の季節になった。 わけても額紫陽花の控えめな風情にひかれる。 一方、紫陽花は真冬になっても花を散らさず薄雪を載せた姿は 誠に侘しい。 見掛けに依らず強情な花である。 因みに花に見えるのはガクの発達したもので装飾花 と呼ばれている。 紫陽花の…

140字の俳句(日日の事)

二羽のカラスが電線に止まっている。 少し小さめの方が飛び立っては元の位置に戻る行動を 繰り返している。 その内に、こちらが見ている事に気付いたらしく 二羽連立って近くの電線に飛来、大きな鳴き声で 威嚇し始めた。 これも教育の一環なのか?今のカラ…

140字の俳句(日日の事)

センダンの青い実が膨らみ始めた。 直径3~4mmだが育ち盛りの勢いを秘めている。 若い葉を揉んで匂いを嗅いでみた。 小さな実も指で潰して嗅いだが別段何のことは無い。 センダンは双葉よりと言うが、、、、、 芳しいセンダンと我々の知るセンダンとは全く …

140字の俳句(日日の事))

植物は互いに会話を交わしている? との学説が有力視されている。 勿論動物とは異なる伝達手段を使っての事。 だとすれば、第一に立葵を挙げたい。 直立した茎に次々咲く花は、さしずめスピーカー、 見方によっては聞耳を立てている様でもある。 近くの公園…

140字の俳句(日日の事)

川岸に投げ込まれた護岸用の岩石。 そこに打寄せられた大魚の屍。 屍を見付けたカモメは飽食するまでそこを離れない。 人が近づくと睨みつける眼光は鋭い。 風が止み鏡の様な川面は対岸の緑を映し込んでいる。 五月も終わるが、魚の屍は一年を通して絶える事…

140字の俳句(日日の事)

小石川植物園にニュートンのリンゴと称する木がある。 ニュートンの生家にあった木の枝を接木したのだそうだ。 当時ニュートンが本当にリンゴの落ちるのを見て 万有引力を発見したかどうかについては諸説ある。 そこで少々ふざけた句を創った事がある。 本当…